Thursday, 3 September 2020

クラウド技術で癌治療に革命を起こす

世界各国で新型コロナウイルスと戦う医療機関を支援するため、さまざまな企業がITツールの無償化や低コストでの提供を開始しました。日本でもオンライン診療が解禁されるなど、医療現場の負担を減らすため、医療のIT化が急ピッチでスタートしています。

新型コロナウイルスだけではなく、迅速で正確な対応が求められる医療機関は、AIを活用した医療 データマイニングや、解析技術を用いた画像診断などデジタルトランスフォメーションの恩恵を大きく受ける業界の1つです。特に、患者数も多い癌治療の研究開発現場は、IT技術への期待がおおきく、ベンチャー企業も参入している分野です。

癌サンプルをスキャンし、治療薬をアドバイス
厚生労働省は1月、2016年に99万人が新たに癌の診断を受けたと発表しました。癌患者は増え続け、日本人は生涯に2人に1人がかかる計算です。平成 30 年の死亡数を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物<腫瘍>で 37 万 3547 人 (死亡率は 300.7〈人口 10 万対〉)でした。

デンマーク コペンハーゲン発の医療ベンチャー企業Oncology Venture社は、癌のサンプルをスキャンすることで適切な薬をアドバイスする技術を開発し、世界中でサービス展開しています。
世界の死因の第一位である癌を対象にしたサービスは需要も高く、同社は一度にスキャニングできる数を増やすためにシステムの改変を検討していました。
当初は、自社のプラットフォームを運用していましたが、必要なパフォーマンスを得るためのリソースがなく、拡張が課題でした。また、医療業界ではリソースにいかに早く、簡単にアクセスできるかも重要ですが、同社が管理する機密データのセキュリティが最も重要でした。

より多くの癌サンプルを同時にスキャニングするために、コンテナ技術を利用して処理能力の向上を検討し、クラウドの導入を決定。また、従業員が、機密性の高い患者データを危険にさらすことなく、ネットワーク上のあらゆるデバイスからいつでも安全に開発ツール、アプリケーション、データにアクセスできるデジタルワークスペースを導入しました。

デジタルワークスペースとは?
デジタルワークスペースとは、パソコンやモバイルなどデバイスを問わずに、従業員がさまざまなアプリケーションやデータを利用できるようになる、バーチャルな作業環境です。最高の仕事を行えるように、安全で高性能かつ柔軟性が必要とされます。

また、クラウドでの利用が想定されるため、ネットワークやアプリケーションのパフォーマンスを最適化することで、従業員の作業意欲を維持する信頼性の高いエクスペリエンスを実現しワークフローを設計してタスクを簡素化し、生産性を維持することが可能になります。

Oncology Ventureは、シンプルで使いやすいインターフェースのデジタルワークスペースを導入後、従業員オンボーディングがスムーズになり、新入社員でも1日目から即戦力として活躍できる環境の構築につながりました。

3週間かかっていた1,500人のデータ処理を数時間で

クラウド導入後の一番の変化は、データ処理が早くなったことでした。自社のデータセンターで分析を実行していた際は、3週間かかっていた1,500人の患者データ処理が、数時間で実行できるようになり、結果をより早く得て、患者により早く治療を提供できるようになりました。

オートスケール機能を活用することで、使っていないリソースをオフにしコスト削減が実現しただけでなく、ネットワーク管理チームの不安要素も減ったそうです。
テレワーク同様に、コロナ禍で加速した医療業界。オンライン診療だけでなく、さらなるIT化が進めば、医師が重要なデータにシームレス、迅速にアクセスでき、患者とのやり取りに割くことのできる時間が増加するなど、働く医師や看護師の業務の効率化に繋がり、その結果、よりよい医療サービスの提供が可能になるでしょう。
IT部門が計画、関係者との関与、および適切なテクノロジーの選択を行うことにより、より迅速な導入と複雑さの解消、さらにはコスト削減も実現できます。

  

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